世界トップレベルのイタリア人修復士を招へいした実習授業
 奈良文化財研究所で高松塚及びキトラ古墳壁画の修復現場を視察

 本センターは、第3回目となる「日伊教育連携事業」として、フレスコ壁画修復の世界トップレベルにあるイタリア国立フィレンツェ修復研究所のパオラ・マリオッティ専任修復士を講師に迎え、11月13日から3日間にわたり、学生の実習授業を実施しました。
 なお、フレスコ壁画の修復保存に関する理論の講義及びフレスコ壁画の修復技術(パック洗浄法)の実習には、人文学類及び学校教育学類に所属する約30名の学生が参加しました。


パック材を巻き取りながら、炭酸アンモニア溶液を含ませた綿棒で筆跡にそって洗浄

 実習では、あらかじめフレスコ壁画の表面に経年変化の汚れ(付着物)や後世の加筆を想定した彩色を施しておき、セルロースを主成分にしたパック材に炭酸アンモニウムを含ませたもので、表面の付着物を浮き上がらせて除去する一連の技術が披露されました。パオラ・マリオッティ修復士の実演を見学したあと、学生達はグループ別に講師から指導を受けながらパック洗浄を体験し、洗浄によって付着物の下から原作が現れてくると、あちこちから驚きと喜びの声が上がりました。
パック材に含ませる炭酸アンモニア
溶液を作る
付着物が浮き上がった頃合を見て
パック材をはがす
パック材をはがしたあと、海綿に含ませた炭酸アンモニア溶液で洗浄

 また、実習後には、文化庁文化財部古墳壁画室の「壁画の保存修復と活用の調和に関する協力」事業の連携事業として、パオラ・マリオッティ専任修復士と本センター研究員の7名が建石徹古墳壁画対策調査官とともに奈良文化財研究所埋蔵文化財センターの高妻洋成室長を訪問、高松塚古墳壁画修理作業室及び飛鳥資料館等を視察しました。修理作業室では、第一線の現場で活躍する日伊の壁画修復士が修復技術に関して直接かつ活発に意見交換するなど、今後の日伊の文化財の修復と保存科学の連携発展に繋がる大きな成果を得ることができました。