金沢大学「日伊教育連携事業」
イタリアから世界一級の壁画の修復士を招き、学生への講義・実習指導

実習風景

 金沢大学フレスコ壁画研究センター(センター長 宮下孝晴 人文学類教授)では、「日伊教育研究連携事業」として、国立フィレンツェ修復研究所のマリアローザ・ランフランキ主任修復士を本学に招へいし、人間社会学域人文学類フィールド文化学及び学校教育学類美術教育、理工学域環境デザイン学系医薬保健学域保健学系の学生等を対象に11月19日から25日までの間、集中講義及び学生実習指導を行った。
イタリアでは1980年代以降、できるだけ壁画を建造物から剥がさない方向での修復と保存を実施しているが、壁画保存の最終手段としての「剥がしの技法」はもっとも高度な技術と多くの経験を有する、病んで傷ついた壁画に対する重要な治療法であることに変わりない。
本実習に先だって、絵画担当の大村雅章教授が『聖十字架物語』(サンタ・クローチェ教会大礼拝堂)の一部を、これまでの材料・技法研究を活かして、原寸大で忠実に3点同時に模写。内一点は剥がさずに壁面に残し、残り2点をストラッポ法(最上層の描画面のみを薄く引き剥がす技法)とスタッコ法(下塗り漆喰と上塗り漆喰の層間で剥がす技法)で壁面から剥がして比較、壁画をどこまで忠実に保存できるかを実験した。サンプル壁画の中にはフレスコ技法だけではなく、彫刻担当の江藤望准教授が担当した接着剤(卵黄)を用いたセッコ法部分や蜜蝋と金箔による金彩装飾を含み、壁面から剥がされて別のパネルに張り替えられたときに、どこまで損傷を受けるかも調べた。
期間中、本学中村信一学長は、実習授業を視察し、世界一級の壁画修復士の指導の下、ストラッポ法での壁画の引き剥がしを自ら手伝うなど、貴重な体験を学生たちとともにした。