【日伊文化財協力事業ワークショップ】
 9月3-4日 文化財レスキューをめぐって日伊が意見交換

 本センターは、文化庁文化財部古墳壁画室と共同で日伊の壁画の修復保存に関する研究成果を共有すべく、9月3日-4日の2日間にわたり、イタリア国立フィレンツェ修復研究所において、昨年1月に続いて第2回目のワークショップを開催しました。
今回は特に、2011年の東日本大震災後の日本が抱える深刻な文化財レスキューに関する問題について、1966年11月のアルノ川氾濫によってフィレンツェが受けた被害後に展開された大規模な文化財レスキューの実績をもつ国立フィレンツェ修復研究所の関係者との活発な意見交換が行われました。

  
  レオナルド・ダヴィンチ作「東方三博士の礼拝」の修復の説明を受ける関係者

 ワークショップは、宮下孝晴センター長の挨拶と司会で始まり、文化庁から伝統文化課 文化財国際協力室 香取 雄太 協力推進係長の事業概要説明、文化財部 古墳壁画室の建石 徹 古墳壁画対策調査官から「東日本大震災における文化財被害と文化財レスキュー事業の概要」、続いて奈良文化財研究所 埋蔵文化財センターの高妻 洋成 保存修復科学研究室長から「文化財レスキュー事業における水損文化財資料への対応」について報告がありました。
 一方、イタリア側からは国立フィレンツェ修復研究所マルコ・チャッティ所長からフィレンツェの大洪水被害後の対応と修復活動の経過、ファブリーツィオ・バンディーニ専任修復士から当時の文化財レスキューに関する具体的な報告がありました。
 その後、参加した約40名あまりの修復士や科学ラボの研究者たちとの活発な質疑応答や意見交換が行われ、実り多い研究会となりました。

フィレンツェ国立図書館の紙資料の修復施設で説明を受ける 研究発表する文化庁の建石徹古墳壁画対策調査官

 ワークショップの前日、9月2日には、大塚オーミ陶業株式会社より大杉 栄嗣 社長、櫻井 烈 顧問も同行して、国立フィレンツェ修復研究所内や市内各所に点在する各修復ラボ(絵画、彫刻、紙、織物等)を視察。修復担当者と直接に意見交換を行いました。また、金沢大学の修復プロジェクトが進行中のサンタ・クローチェ教会では、マリアローザ・ランフランキ専任修復士から、ジョットの壁画『聖フランチェスコの聖痕拝受』についての説明を受けました。