サンタ・クローチェ教会壁画修復シンポジウム
日伊共同プロジェクトの成果と夢


 イタリアフィレンツェの「サンタ・クローチェ教会」大礼拝堂(聖十字架物語)の壁画修復プロジェクトの成果を発表する国際シンポジウム「日伊共同プロジェクトの成果と夢」が5月29日(金沢大学:金沢会場)と6月1日(イタリア文化会館:東京会場)の2会場で開催されました。東京会場では,金沢大学中村信一学長,イタリア文化会館ウンベルト・ドナーティ館長,ヴィンチェンツォ・ペトゥローネ駐日イタリア大使があいさつをし,両会場合わせて600名の研究者,学生等が参加しました。

 シンポジウムは2004年から本学が進めている同プロジェクトが2010年9月に完成することを記念して開催したもので,本学フレスコ壁画研究センター長の宮下孝晴教授は,サンタ・クローチェ教会壁画修復プロジェクトの経緯と成果,角間キャンパスで当時と同じ材料,手法で復元したプロジェクトの成果を報告しました。

 続いて,国立フィレンツェ修復研究所のイザベッラ・ラーピ所長,同研究所チェチリア・フロジニーニ壁画部長,サンタ・クローチェ教会ステファーニア・フスカーニ財産管理部代表,同財産管理部ジュゼッペ・デ・ミケーリ事務局長,画像データ処理会社Cultura Nuova S.r.l. 代表マッシモ・キメンティ氏らイタリアから招いた専門家5人が壁画修復の診断調査の研究成果を発表しました。サンタ・クローチェ教会壁画修復プロジェクトに関する診断・調査・修復データは,デジタルアーカイブとして近日中に本学壁画研究センターホームページで公開される予定です。

 また,今年度から実施する国立フィレンツェ修復研究所との日伊共同事業「南イタリアの中世壁画群の診断調査プロジェクト」では,これまでの技術を更に発展させ,診断調査した高精細のデータを含む各種の計測記録を統合してヴィジュアルなデジタルアーカイブの作成をめざします。

講演者
  • 中村信一

    金沢大学長
    宮下孝晴

    金沢大学人間社会学域人文学類 教授
    フレスコ壁画
    研究センター長
    ステファーニア・フスカーニ

    サンタ・クローチェ教会財産管理部 代表
  • ジュゼッペ・デ・ミケーリ

    サンタ・クローチェ教会財産管理部
    事務局長
    イザベッラ・ラーピ

    国立フィレンツェ修復研究所
    所長
    チェチリア・フロジニーニ

    国立フィレンツェ修復研究所
    壁画部長
  • マッシモ・キメンティ

    画像データ処理会社 Cluturanuova S.r.l.代表

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シンポジウム内容

 ルネサンス文化を開花させたフィレンツェ。
 そのフィレンツェ三大教会の一つであるサンタ・クローチェ教会は、イタリアの歴史に燦然と輝く人物たちが数多く埋葬されているパンテオンでもあり、ミケランジェロやマキアヴェッリ、ガリレオ・ガリレイ、ジョアキーノ・ロッシーニらが永遠の眠りについています。

 このサンタ・クローチェ教会大礼拝堂を飾っている壮大なフレスコ壁画「聖十字架物語」は、ジョットの直系であるタッデーオ・ガッディの息子アーニョロ・ガッディによって14世紀末に制作されました。
 それは今から600年以上も昔の壁画にもかかわらず、近代的な修復を受けたことがありません。現状の診断調査、修復の必要性が叫ばれながらも、その広大な面積(820u)のために後回しになっていたのです。

 美術愛好家のK氏からの寄付を受けた金沢大学は、国際共同研究事業として、フィレンツェ国立修復研究所、サンタ・クローチェ教会とともに、2004年から5年計画で壁画の診断と修復作業に着手しました。
 こうしてイタリア最大級のフレスコ壁画「聖十字架物語」が、初めて最新の科学テクノロジーで診断調査され、美術史的な位置づけや図像解釈にも新知見をもたらすことになったのです。

 また、このプロジェクトの実績に基づき、2010年4月からは南イタリアに点在する中世壁画群の診断調査とデジタルアーカイブの形成をめざして、金沢大学と国立フィレンツェ修復研究所の共同プロジェクト(4年計画)が始動することになりました。今回のシンポジウムでは、前記プロジェクトの経過および学術的成果の一部を報告するとともに、新規プロジェクトの構想についても紹介します。

サンタ・クローチェ教会壁画修復シンポジウムチラシより