金沢大学機能強化プラン2012

金沢大学

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金沢大学は、大学憲章前文において「地域と世界に開かれた教育重視の研究大学」を理念として掲げ、教育と研究が時代を切り拓き世界の平和と人類の持続的な発展に資する、との認識に立ち、知の創成と人材育成を基本方針に定めている。この大学憲章に則り、我々は、次の4つの柱からなるビジョンを「金沢大学アクションプラン2010」に掲げた。

「国際通用性のある人材育成」

「新たな知の創成」

「リージョナルセンター」

「真に社会から信頼・期待される大学」

ここに新たに「機能強化プラン2012」を示し、「金沢大学アクションプラン2010」を基本としつつも大学が直面する課題と行動計画を明確にし、金沢大学が担うべき機能と役割についての自主自律による強化に向けた指標を明らかにするものである。

本プランを通じて、我々は、金沢大学の存在理由が「社会のための大学」にあるとの認識に立ち、真理を追究するとともに新たな知を創造し、それを糧として「東アジアの知の拠点」にふさわしいナショナルセンターの形成に努めようとするものである。同時に、地域と共に生きる大学として、持てる知を活かし、社会連携を推進するリージョナルセンターの責務を果たさなければならないことも自明である。

I. 課題

金沢大学は、時代と共に生き、時代の課題に対して素早く反応し、常に「社会のための大学」であろうと努めている。そのためには、学生、教職員、大学法人が、時代と社会の求める課題を認識し、共有することが大切であり、ここに金沢大学が課題として認識する事項を示す。

  • 「20世紀型工業文明の転換期」とも言われる今日、人類は資源・エネルギー、食料、人口、気候・環境、民族・国家、経済格差など、地球規模の問題に直面している。これらの問題に敢然と立ち向かい、世界を自由に行き来する、彊(つよ)い人間力を有するグローバル人材を養成することは、我が大学に課された課題である。
  • グローバル化の進む国際社会での存在感を示し、ナショナルセンターとしての「世界に開かれた研究大学」を目指す上で、大学を構成する学生と教職員が常にグローバル化の意識を持つことは、忘れてはならない課題である。また、大学を国際化し、「東アジアの知の拠点」にふさわしい教育組織、研究組織及びその支援組織を三位一体で構築しなければならない。
  • 持続的発展を期待できる社会、安心安全な社会の構築や地域産業のイノベーションなど、地方の復権と活性化を目指して解決すべき問題は山積している。大学の持つ知的・人的資源を活用し、地域と手を携え、これらの課題に積極的に関わることにより、リージョナルセンターとしての機能を果たさなければならない。

II. 行動指針

1. 教育

  • 持続可能な社会の構築を目指し、社会の変化と向き合い、自らの立ち位置を見極め、世界を自由に行き来し、社会に働きかけることのできる能力を涵養する教育を行う。
  • 国立大学法人としての高等教育における責務を堅持しつつ、将来を見据えて断行した改組である、3学域・16学類の教育体制を定着させ、この制度の下に世界共通性のある学士力を備えた人材の育成を目指す。
  • 国際社会では、自らのアイデンティティをしっかりと持ち、自らの立ち位置(ポジショニング)を明確に認識できることが求められる。このような能力を持たせることを目指した教養教育を行う。
  • 大学院課程では、高度な専門的知識を修得し、独自の研究課題を開拓し、国際的に活躍できるグローバル人材を育成する。

2. 研究

  • 強いところを核として大学の研究力を強化し、国際性ある研究拠点の形成を図るとともに、これを先導として全体のレベルアップを図る。
  • 研究に輝く教員を育て、リクルートし、人材の蓄積により達成される魅力ある「教育重視の研究大学」を目指す。

3. 国際

  • 日本から外国へ留学しやすい環境と、外国から日本へ留学しやすい環境を構築する。
  • 留学生共存型の教育の場を醸成し、国際的視野を持つ人材を育成する。
  • 教職員の国際化を支援する制度を拡充し、教職員がそれぞれに期待される職務に力を注げる環境を整備する。

4. 地域連携

  • 大学の持つ知と人材の活用により、産官学連携の下、地域経済の振興・活性化に寄与する。
  • 地域社会の抱える行政、教育、医療等の問題解決に寄与し、地域活性化を目指した提言と情報発信に努める。
  • 上記の連携により、地域の期待にこたえ、リージョナルセンターとしてのプレゼンスを高める。

5. 運営

  • 広く学内外の意見を取り入れ、法令遵守を徹底し、情報を的確に発信することにより、透明性ある自主・自律の運営を行う。
  • 大学の基盤は教職員にあるとの認識に立ち、適材適所における教職員の活用と組織のスクラップ・アンド・ビルドにより、教育・研究・運営の質の向上を図り、金沢大学が掲げるミッションの達成を目指す。

III. 機能強化に向けての行動計画

1. 教育

《学域学類制の定着と発展》

持続可能な社会の構築に向け、能力を発揮できる人材育成のために
  • 「学域学類制」が社会の変化に対応できる柔軟な教育制度となっているかを多角的に検証し、学生のニーズやキャリア形成に適切に対応するための充実策を講じる。

《学士課程における豊かな教養に根ざした人間力の形成》

社会を知り、深く考え、自律的に行動できる人材育成のために
  • 知と倫理観に裏打ちされた人間力の基礎を涵養することを共通教育の第一の目的として定め、これを具体化するために、共通教育科目の提供方法及びカリキュラムの抜本的改革に着手する。
  • 専門教育においては、知の深化と関心の拡大を支援するため、学域共通科目及び副専攻制度を検証し、カリキュラムポリシーの実質化を図る。また、地域社会や地方自治体の要請にこたえ得る実務能力を備えた人材を養成し輩出する。
  • 人間力の醸成に向け、柔軟かつ効果的な教育体制を実現するため、教員の戦略的活用を推進する。

《大学院課程における教育プログラムの高度化》

世界水準の人材育成のために
  • 各研究科が公表しているカリキュラムポリシー及びディプロマポリシーに基づき、優れた知識と実践力を有するグローバル人材の育成に適合した教育プログラムを実施する。
  • 国際的に通用する高度なコミュニケーション能力と交渉力を備えた人材育成のため、英語だけで全課程を完結する教育プログラムの拡充を図る。

《国際的視野を有する人材育成》

多角的視野を醸成するために
  • 国際的課題を共有するため、日本人学生と留学生とが共に学び議論し、異文化を許容できる人間力を涵養する、参加型の授業科目を増設する。
  • 交流協定校との間で、また複数の海外協定校と本学との間で構成する国際コンソーシアムの中で、ダブルディグリー、ツイニングプログラム、単位互換制度を拡大展開し、留学生派遣・受入れを推進する。
  • 海外インターンシップを充実させ、キャリアパスと接続させる。
  • 留学生派遣の促進に向け、適切な情報提供や言語運用能力の向上支援等、学生の意欲を喚起する体制を充実させる。

2. 研究

《世界に通用する高度学術研究の推進》

新たな知の創成に向けて
  • 大学が重点的に支援している研究分野の成長度合いと研究域附属研究センターの研究活動を検証し、当該研究分野の定着・拠点化の策を講ずる。
  • 特色ある新研究分野の育成と分野横断型の新領域創成を推進するとともに、政策課題対応型研究プロジェクトの育成に努める。

《基礎科学研究の維持・発展》

基盤的学術の維持と科学技術のさらなる発展のために
  • 学術的多様性の維持(知の継承)は国立大学の責務であると受け止め、本学が果たすべき分野の維持発展に努める。
  • 知の継承と発展のため、若手研究者の育成に努める。

《特色ある研究情報の発信と研究成果の社会還元》

研究成果を社会へ還元するために
  • 知の創造を目指す卓越した研究に裏打ちされた教育活動を通して、有為な人材を社会に送り出す。
  • 研究の成果と知的資源を活用して産官学連携のさらなる推進を図る。

《研究支援環境の整備》

研究の組織的支援を強化するために
  • 「先端研究・イノベーション推進機構」を新たに設置し、研究推進、科学技術開発推進から産官学連携、研究成果の社会還元までの研究支援を行う。
  • すべての部局において共用研究スペースの確保に努め、大型外部資金獲得研究グループ等の用に供し研究活動の活性化を図る。
  • 全学的な視点での「研究スペース確保」と「設備サポートのための組織」の整備により、大型研究設備の共同利用、有効活用を推進し、研究活動の活性化を図る。

3. 国際

《国際化を目指す支援組織の構築》

異文化体験の機会あふれる大学、留学生が集う大学を目指して
  • 全研究科参加型の教育組織を構築し、高度な専門性を有するとともに、高い倫理性と深い教養を有するリーダーとなる人材を養成する。特に、アジア諸国において要請される人材の輩出を目指す。
  • 留学生派遣促進に向け、留学先として魅力ある大学との協定締結を推進する。
  • 学生の海外留学、教職員の海外研修、海外からの留学生受入れなどを総合的に支援するための一体的組織を構築する。

《海外との交流展開》

東アジアの知の拠点として、世界的視野で国際交流を推進するために
  • 国際戦略に沿って東アジアを中心とした大学間交流を推進し、交流の活性化を図る。
  • 東アジアにおける海外リエゾンオフィスを増設するとともに、未設置地域での海外拠点を構築し、国際交流を促進する。

4. 地域連携

《リージョナルセンター機能の強化》

地域振興及び地域の課題解決に資するために
  • 自治体との協定を基に、地域活性化に向けた連携事業を展開する。
  • 自治体や医療機関等と連携し、地域連携クリニカルパスの構築・運用を図るとともに、地域医療の再生計画に主導的に参画する。

《総合的地域研究拠点の強化》

総合的地域研究を推進するために
  • 能登オペレーティング・ユニットを中心とし、能登半島を教育・研究のフィールドとして活用するとともに、地域社会の振興に寄与できる活動を推進する。

5. 運営

《運営の強化》

大学運営を強化するために
  • 大学の存在理由は「社会のため」であることを信条とした適切な情報発信を行う。
  • コンプライアンス体制を間断なく見直すとともに、法令遵守に係る研修等を充実し、教職員の意識を高める。
  • 職員の所掌範囲の壁を低くし、業務上の見えない壁をなくす事務運営を図る。

《組織の強化》

組織を強化するために
  • 戦略的に事業を展開するため、スクラップ・アンド・ビルドにより教育及び研究を支援するセンターの新設を図る。
  • 年功にとらわれない適材適所の人事に関する全学的理解を促進し、実行する。
  • 研究力強化、国際化、グローバル人材育成等、戦略的課題に優れた能力を発揮できる専門職の養成を目指すとともに、専門職のキャリアパスの構築を目指す。

《財政基盤の強化》

健全な大学運営を行うために
  • 運営費交付金の逓減に対応しつつ事業を展開するため、財政計画を策定する。
  • 外部資金を獲得するための方策を充実し、外部資金の安定的確保に努める。

《内部質保証システムの強化》

ミッションを実現するために
  • 教育・研究・運営等の自己点検評価を実施し、その結果を踏まえ改善へと続くPDCAサイクルを構築するとともに、実効ある実施を確実にする制度を構築する。

機能強化プラン2012について

作成経緯

平成23年6月に国立大学協会は、「国立大学の機能強化-国民への約束-(中間まとめ)」を公表した。

そこでは、我が国が直面している多くの緊迫した課題を克服し、安全かつ安心な社会を構築するため、大学の間断ない改革を図り、次世代を担う卓越した人材の育成を計画的に実現することが求められている。

金沢大学においては、本学の有する知的・人的資源を基に、本学が果たすべき地域社会と世界における機能を強化すべく、学長の下に「機能強化プラン作成WG」を設置した。そこでは、本学のミッションを実現するための道程として、平成25年度までの取組等を検討し、「機能強化プラン2012」を取りまとめた。

機能強化プラン作成WG委員名簿

  • 【主査】 櫻井 勝  理事(情報担当)
  • 生田省悟  人間社会研究域長
  • 山崎光悦  理工研究域長
  • 山本 博  医薬保健研究域長
  • 中島健二  人間社会研究域経済学経営学系教授
  • 福森義宏  理工研究域自然システム学系教授
  • 向 智里  医薬保健研究域薬学系教授
  • 澤田茂保  外国語教育研究センター長
  • 中山敏泰  総務部長

審議経過

機能強化プラン作成WG

  • 第1回 平成23年11月18日(金)
  • 第2回 平成24年 2月 9日(木)
  • 第3回 平成24年 2月23日(木)
  • 第4回 平成24年 3月13日(火)
  • 第5回 平成24年 3月19日(月)